企画展開催にあたって
川井村の郷土芸能は、お盆の仏供養、寺社の縁日や落成式など、地域の様々な行事で必要とされ踊られてきました。伝わった年代や由来はそれぞれ異なりますが、「舞い手も見物する人も踊りを支える人も地域の人」というように、地域の人々自身によって伝えられてきた芸能ばかりです。踊りは厳粛な雰囲気の中で踊られますが、人々が楽しんで見る娯楽の一つにもなっています。
現在、村に伝承されている芸能は神楽(かぐら)、鹿(しし)踊(おどり)、剣舞(けんばい)、さんさ、虎(とら)舞(まい)、笠(かさ)踊(おどり)、こうきりこ、御戸入(みといり)、豊年(ほうねん)踊(おどり)など11種類です。これほど多くの芸能が伝承されてきた背景には、早池峰信仰や村外にある芸能の影響が考えられます。また、結婚や出稼ぎというような人々の暮らし方によってもたらされた芸能もあります。そして同時に村内の他の地域や村外に伝えられた芸能もあるのです。このことから、地域を越えた活発な交流の様子が想像できます。
現在、村には郷土芸能保存会が18団体あり、28の芸能が伝承されています。一方『川井村郷土誌』には37の芸能が伝承されていたことが記録されています。しかし今回調査を行ったところ、かつては13種類57もの芸能が存在したことを確認できました。調査ではそれぞれの芸能について聞き取りを行いました。また現在踊られていない芸能についても可能な限り記録しました。
今回の展示では調査結果をもとに、村にどのような芸能があったのか、どのように伝わったのか、そしてそれぞれ何のために踊られたか、どのような衣装だったのかなどを歴史とあわせて紹介します。なお、今回の展示は芸能の紹介を中心に取り上げました。そのため、神楽については修験(しゅげん)道(どう)や神道(しんとう)など神楽を取り巻く環境も含めて、機会を改めてふたたび紹介したいと考えています。今後のさらなる伝承活動への励みとなることを期待し、この企画展を開催します。
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