本村の諸職は郷土誌によると様々な職種があったことがわかる。これらは全て人々の生活を支えるのに欠かせないものだったが、今回は、比較的用具のそろっているものを例示する。



 天然のウルシも多かったが、植林が奨励されて、畑の脇などにウルシを植えて栽培している家もあった。掻き取ったウルシ液は、I-2で述べる「ウルシ塗り」に用いられたほか、「ウルシ掻き職人」が県外からも来て、採集あるいは採集したものを買い取っていった。ウルシ掻きは春から秋にかけて行われ接着剤として自家用にも使用した。
掻き鎌
掻き箆
えぐり鉋
こだす、道具入れ
つぼけ、掻き樽



本村の「ウルシ塗り」の歴史は古く、江戸時代には江繋、小国地区で漆器が生産され、製品を背負って大迫方面で商売をしていたと伝えられている(『川井村郷土誌(上)』1962川井村)。その後明治初年には小国地区内5軒で作製されていた。これを[小国膳]と呼ぶ。小国膳は[猫足膳]とも呼ばれ、色使いに特徴があり、縁と足は黒色で、膳は朱色である。最盛期には、地元を始め大槌、宮古、山田など沿岸部に売っていた。昭和初期には技能講習も行い、技能向上に努めた。昭和40年代で廃業している。
練り鉢
練り箆
練り棒
はけ
磨き石
道具箱、作業台
皮剥ぎ鎌
曲がり金、他
小国膳




 早池峰山北麓のヒノキアスナロ(ヒノキ科アスナロ属、地元呼称はヒバ)を割った[桧柾]は、江戸時代からこの地域の重要な産物だった。馬につけて盛岡城下へ運ばれた。
しぎり
柾割り鉈
せん



かつては村内各地区に桶屋があったという。昔は、水を入れるものは何でも[桶]だったので、「桶屋と鍛冶屋は食いっぱぐれがない」といわれるものだった。
柾割り鉈
木割り鉈
せん
正直台鉋
内せん
桶屋定規
竹釘抜き
締め木
たが当て
木槌
刳り貫き小刀
鋸目立て槌
内丸鉋
底取り鉋
刻印

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